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1977年のテレビドラマ「岸辺のアルバム」が凄まじい

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アンナチュラル、評判通りとても面白かったです。

次に何を見ようかな、とラインナップをながめていて目に留まったのが

「岸辺のアルバム」

山田太一脚本による不朽の名作ドラマ。名前だけは聞いたことがありました。

まさか動画配信サービスで見られるとは。アプリの使い勝手はいまいちですが、Paraviなかなかすごいです。

ドラマ「岸辺のアルバム」の概要

1977年にTBSで放送されたテレビドラマ「岸辺のアルバム」は、全部で15話あります。

実際に1974年に起きた多摩川水害からヒントを得て、山田太一により描かれたドラマです。

ストーリーはざっくり言うと川沿いの一戸建てに住む4人家族がそれぞれに問題を抱えながら家庭が崩壊していくというもの。

田島家の父親は仕事人間、大学生の長女・律子は英語かぶれ、大学受験を控えた高校生の繁は勉強があまり得意ではありません。八千草薫演じる母親は、家族がなかなか帰ってこずにろくに話もできないことを寂しく思っています。そんな折に「浮気のお誘いです」と謎の電話(イケボ)が……。というお話。

ドラマは1977年6月から放送されましたが、同年5月には脚本の山田太一による原作小説が出版されています。

40年前の日本文化に驚く

「岸辺のアルバム」を見始めてまず驚いたのが、今とは異なる文化です。

例えば、田島家の長である父親は商社に勤めていますが、オフィス内の自席で堂々とたばこを吸っています。仕事の会議中はもちろん、外で喫茶店に入ってもまずたばこ、避難所の中学校でもたばこ。どこでもおかまないなしに喫煙しています。

分煙化が進んでいる今では考えられないことだよなぁ、と驚いてしまいました。

そもそも最近のドラマのなかで意味もなくたばこを吸うシーン自体、あまり見かけないですよね。

次に興味深かったのが、田島家長男の繁(しげる)が出会う女性のアルバイト先です。

その女性(通称アイシュウ)は風吹ジュンが演じています。彼女が働くお店はなんとモスバーガー。40年前からあったんですねモスバーガー。

繁はしょっちゅうモスシェイクを注文していました。おいしいですよね。モスシェイク。

アイシュウの髪の毛がワンレングスのロングでバイト中に髪を決してまとめないのもまた衝撃でした。ゆるい時代だったんでしょうか。

 

家族のすれちがいを見事に描き出す

「岸辺のアルバム」でとくに見事だったシーンが、第4話にある食事風景です。

子供たちによる食事のしたく

いつも仕事で遅くにしか帰らない父親が珍しく早く帰宅し、久しぶりに一家だんらんで夕食がとれることになった田島家。

夕食前、父親の連絡を受けたのは息子の繁。母親はちょうど買い物に出ていて不在でした。このとき母親は父親をのぞく3人分、もしくはそれよりすくない人数分の夕食を買いに行っています。もう大きい子供たちがかならず夕飯を食べに帰ってくるとは限らないからです。

そこで繁は、父親が居る珍しい夕食のためにお寿司を取り、茶わん蒸しを作り始めます。

その茶わん蒸しをつくっているところに姉の律子が帰宅。

「あんた何やってんの? こんなに暑いのに茶わん蒸しなんておかしいわよ。男がはしゃいで茶わん蒸しなんてつくっちゃって、変よ」

 と、インテリぶった(というより実際に秀才な)口調でまくしたて、繁はへそを曲げてしまいます。

繁は

「それなら姉ちゃんがつくれよ。お高いくせに茶わん蒸しもつくれないのかよ。絶対つくれよな」と応戦。

家事をしなれない律子が味の調整に失敗して茶わん蒸しならぬ大量の「どんぶり蒸し」ができた頃に、家族が食卓にそろいます。

お寿司が特上だった問題

めずらしく4人そろっての夕食ですが、父親は不機嫌顔です。家族には言っていませんが、仕事の調子があまりよくないのです。家族のためというよりは、仕事で参って早く帰宅した父。

そんなことは知る由もない繁は、「せっかく特上のお寿司を取ったんだからもっと食べてよ」とすすめます。

「特上の……お寿司?」と驚く父母。特上のお寿司なんていままで取ったことがありません。 

繁が言うには「一人前だけ頼むのに安いのでは申し訳ないと思ったから特上にした。だけど一人前では出前してくれないっていうから二人前にした」と。

父親が怒り始めます。

「なら、自分で取りに行けばよかったじゃないか」

「だって、家には僕ひとりだったんだもん」

「だいたい、夕食に2000円以上も使うなんてどうかしている! 家で飯でも炊けばいいじゃないか」

「あらお父さん、普段は2000円どころか、200円も使っていないわ」

……せっかくのだんらんが大荒れです。

しまいには繁が言った「きまぐれで早く帰ってきてそんな言い方はないじゃないか」という言葉に激怒する父。

「きまぐれ? 仕事をきまぐれでやってるとでも思ってるのか!」と、大声で怒鳴り、律子は泣き始め、一家そろっての夕食風景は最悪の雰囲気に。

こういうことってよくある

誰かが誰かによかれと思ってしたことが、うまくいかずに相手の怒りを買ってしまう。こういうことってよくあるんじゃないでしょうか。

うまくいかない原因はそもそも経験だったり知識不足だったり。

ここでは繁が特上のお寿司をとってしまったことがほころびのきっかけですが、それに父親が激怒したのは「会社でうまくいっていない」という個人的背景のせいでもあります。田島家の父親にとっての仕事は、家族を食べさせていくためであり、彼自身のアイデンティティにも直結しています。

もし繁の失敗を笑って許せるくらいの余裕があれば、一家だんらんで楽しく食事ができたかもしれません。かといって父親だけが悪者かというとそうではないだろうし……。

 

先日亡くなられた津川雅彦さんも出演

「岸辺のアルバム」には、先日お亡くなりになった津川雅彦さんも出演しています。

繁の高校教師として出演しているのですが、すこしアングラというか、真面目一辺倒ではなく酸いも甘いも経験した大人の男性を魅力的に演じてらっしゃいました。

教師として頼りがいがあって、個人的に心配してくれるけど詮索しすぎず、いざというときに助けてくれる。ある意味理想の教師ともいえますね。なによりめちゃくちゃカッコイイ。そんな男前の津川さんを見ていた最中だったので、訃報を知りとても悲しいです。

 

河川の氾濫。家族とは何か。幸せとはなにか。

最後は河川の氾濫によって家が流されてしまいます。

オープニング映像にも使われている実際の映像。何度見ても衝撃的で、胸が痛みます。

家を失うときにそれぞれの「大切なもの」がはっきりします。

父親は「アルバム」。家族の記録。心がすれちがっているときでさえも、岸辺で撮り続けた家族写真。

しかし母親はそれを聞いて異論を唱えます。

「あなたが見ているのは現実のわたしや律子、繁じゃないんだわ。アルバムのなかの家族だけ」と。

それでも、最終的に家からアルバムを持ち出すように繁に言うのですが、ちょっとここがわからなかったです。夫に言いたいことを言ってスッキリしたからでしょうか。

多摩川が氾濫するシーンは当時の映像が織り交ぜて使用されていて、臨場感がかなりあります。

とくに家が流されてしまうまでの経緯がリアルでした。

細かく追ってみると、

 

雨が降り続く

  ↓

一時的に避難する

  ↓

家が大変危険な状況だと知らされる

  ↓

大事なもの(アルバム)を持ち出すために家に帰ろうとするが危険だと止められる

 

といったように、

最初に避難する段階ではまさか家ごと流失するとは思わず、身ひとつだったんです。

家族は大事なアルバムを取りに戻るために、

自衛隊は危険区域に住民を立ち入らせまいとするために、激しく衝突します。

結局は、数分間だけという約束で家族全員で家の中に戻り、アルバムを持ち出すことに成功。そして、家じゅうに向かってみんなで「さようなら」「さようなら」と言うのです。

ドラマを見て得た教訓は、一番大事なものを最初に持って避難するのが大事ということ。そして、いちはやく避難したので人命が失われなかったというのも重要でした。

最後の最後、流された家の屋根を見つけてみんなでそこに座る家族の姿が印象的でした。

 

おわりに

ドラマの中盤あたりまでは妻の浮気が家族にばれやしないかと手に汗を握り、

後半は表面化した家族の問題に向き合う姿に考えさせられ、見ごたえのあるドラマでした。

1話あたり50分。それが15話もあるのでかなりのボリュームです。

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