4月23日に発売された
「青野くんに触りたいから死にたい」3巻を読みました。
前に書いた2巻までの感想が▼こちら
切なくて可愛いけど怖い漫画「青野くんに触りたいから死にたい」 - 日めくりインドア女子
ですが、3巻+アフタヌーン最新号まで読んだ今では感じかたが変わってきています。
以前はまだ「ちょっと怖いけど一途すぎる純愛もの」だと思って読んでいたんですよ。でも、なんか違う。違和感がどんどん膨らんでくる。
謎が謎を呼ぶ展開というか、まるで現実の怪談のように不条理なことばかりが起きるのです。
なので一旦このあたりで疑問点をまとめて、考察していきたいと思います。
以下、コミックス3巻とそれに続く第16話までのネタバレがあります。未読の方はご注意ください。
優里が青野くんを好きすぎる謎
この漫画の主人公・
第1話で青野くんと喋っただけで、恋に落ちます。
なぜ喋っただけで?と思いますが、青野くんが初めて喋った男の子だったから、優しく荷物を持ってくれたから、それだけで恋をするには十分だったようです。
優里はクラスの中でも浮いた存在として描かれています。6月になってもクラスメイトから名前を憶えてもらえず「図書委員さん」と呼ばれる、体育で二人ずつ組むときに余る、昼食をひとりで食べている…等々。
しかし、優里には孤独を気にする素振りがありません。ひとりでいることを当然のように受け入れているようにも見えます。
優里が孤独に慣れる原因をつくったとみられるのが、コミックス3巻で登場する優里の姉・翠(みどり)の存在です。
刈谷家には優里が生まれるまえに亡くなった兄がいました。兄を亡くした両親は悲しみ、「家は地獄みたいになっちゃって」、小さかった翠は寂しい思いをしたようです。その寂しさを埋めるためか、翠は優里に執着してわざと友達との約束を破らせたり、自分とだけ遊ぶように仕向けたりしました。
優里はこのことで「友人がいない環境」に慣れていったと考えられます。友達をつくろうとしても姉によって関係を壊されるので、むやみに人を傷つけないために最初からひとりのほうがましだと考えてもおかしくはありません。
また、3巻途中までは翠は家から離れて暮らしていました。
とつぜんの一目惚れは、姉の目が届かないうちに他者を求める思いが募った結果なのかもしれません。
第一話で印象深かったのは、青野くんと付き合ってから優里が呟く
わたし 青野くんに会う前は
どうやって生きてきたんだろう……(引用元:「青野くんに触りたいから死にたい」1巻14ページ)
という台詞です。
青野くんと付き合ってからの二週間があまりに楽しくて呟いたこの言葉。
ずっと求めていた他者との触れ合いを初めて感じた優里。しかしそれは青野くんの死によって失われます。そういった経緯を考えてみると、優里が「青野くんに触りたいから死にたい」となるのも頷けます。青野くんがいない世界では「生」を感じることができないわけですから。
一方、青野くん(3巻・優里に憑依した状態)は「雛の刷り込みみたいなもの」だと友人・藤本に語ります。「最初に仲良くなったのが藤本だったら、藤本を好きになっていたのではないか」とも。 それは優里が大して青野くんを知らないうちから恋心を抱いていたことからも明らかです。言わば「恋に恋する状態」で落ちてしまった恋ですが、幽霊の青野くんとの仲が深まった今となっては相手は青野くん以外では考えられないのもまた真実でしょう。
ペディキュアの女性は誰なのか
未だに顔が明かされていない、足の爪にマニキュアを塗っている謎の存在。もしかしたら男性かもしれませんが、ペディキュア、ストッキング、タイトスカート、長い髪などからおそらくは女性と推定される「この世のものではない何か」について考えてみたいと思います。
3巻までにペディキュアの女性が登場したのは2回。
1回目は、青野くんに身体を乗っ取られている優里が見た「✖」のある世界(2巻P152~)。乱雑な部屋の中で髪が伸びた青野くん(✖青野)に食べ物を口に詰め込まれていると「誰かいるの?」と部屋に「帰って」きます。
テーブルの下に隠れたところを覗き込まれそうになる寸前で優里の意識が戻り、顔は描かれません。
2回目は優里が自室で青野くんと話しているとき(3巻P49~)。
「コンコンコン」「コンコンコン」とベランダの窓をノックします。
カーテンを開けて確認した優里や青野の目には何も見えませんでしたが、カーテンを閉めたあと、タイトスカートから下のペディキュアの足がベランダに立っている描写がされています。
ペディキュアの女性が誰なのか、今出ている情報だけで言えば一番有力なのが青野くんの母親でしょうか。母親は青野くんが12歳の時に事故で死んだ(3巻P171)との情報があります。
青野くんと繋がりがあり、生きていない人間といえば母親だけです。ここからは勝手な妄想になりますが、ペディキュアの女性が青野くんの母親だとしたら、まだ死者と生者のあいだをさまよっている青野くんを探しに来ているのではないでしょうか。
青野くんは優里から離れようとしても戻されてしまう、とも言っていました(3巻P17)。そのことから青野くんは「自分は優里にとり憑いた霊なのかも」と言っていますが、どちらかといえば優里が命を差し出して呼び出したから、青野くんは優里から離れられなくなってしまった、とも考えられます。
優里が見ている「青野くん」の正体は
3巻に収録されている第13話では、優里が学童のアルバイトをすることになる棚石小学校の渡瀬さんという女の子が登場します。
渡瀬さんは霊感があり、人外なるものの姿が見えてしまうようです。優里と初めて会ったときも、一緒にいた青野くんを見て恐怖の表情を見せます。
その時の表情があまりに「恐ろしいものを見た」という顔なんですよね。優里が見えている普通の青野くんの状態であれば、そこまで怖がらないはずなのに。
その理由は月刊アフタヌーン2018年6月号でに収録されている第16話で分かりました。
四ツ首様に「お願い」する儀式をした渡瀬さんたち三人は、そろって青野くんの姿が見えるようになります。しかし、三人に見えている姿は優里が知っている「人間のかたちをした青野くん」でも「瞳が真っ黒な黒青野くん」でもなく、得体のしれないかたちをしたものでした。それで渡瀬さんはあんなに驚いていたんですね…。
今のところ、優里が見ている青野くんのかたちをした幽霊は他の誰にも目撃されていません。第15話(契約)ではオカルト引きこもり少女の堀江さんが「契約で捧げたものが多いほど繋がりが強くなる=霊を視認できるようになる」と語っています。小学生三人は「手の怪我による血」を四ツ首様に捧げています。しかしそれで何故青野くんがバケモノとして見えるようになったのか…。さらに、そのバケモノの一部が優里と繋がっている、という部分もかなり引っかかります。
優里と青野くんのつながり?
優里と青野くんは強い契約関係にあるだけでなく、もはや共同体になっているのでしょうか。青野くん自体がそもそも優里の意識が分離したものなのかとも考えましたが、それだとこれまでの青野くんとのやりとりがあまりに空しくなってしまいますよね。ただ、優里と青野くんが同じようなことを言っているのが気になります。
3巻の第11話で優里が言う
ぼーっとしてると
時間ってすぐ経っちゃうから…
と、第15話で青野くんが言う
ぼーっとしてると
すぐ時間が過ぎるというか…
が共通していて、なにか意味があるのかと考えてしまいます。
これに関しては最初に優里が青野くんに言っているので、前に言われたことをおぼえていた青野くんが無意識に同じ言い方をした、とも取れます。親しい人同士って同じ言い回しをして親睦を深めていくこともありますが…気になる部分です。
引き続き目が離せません
他にも黒青野や×青野、堀江さんが不登校になった理由、1学年下で同じ学校にいるという青野弟など気になることが満載で、今いちばん続きが気になる漫画です。
引き続き楽しみに読んでいきたいと思います。