これまで数々の美容室へ行き、数々の失敗を経験してきました。
なかでも忘れられないのが、自分にしてはかなり短くカットしてもらったときのことです。
髪質について
わたしの髪は多いほうで、1本1本が太く、しかもクセがあります。そのため、あまりに短くするとクセが出やすくなりボンバヘッドしてしまいます。そのため「短くする」といってもせいぜい耳の下からアゴのあたりまでの長さになります。
「髪を短くしたい」と希望を出すと、たいていは「クセが出やすくなる。長いままでいたほうが重みで落ち着く」と遠回しに、やんわりと断られます。ロングヘアーでいるときもありますが、髪の毛を乾かすのに異常なほどに時間がかかります。寒い時期だと、スマホでニュースサイトのトップページにあるコンテンツをほとんど読み切ってもまだ乾かないこともあります。
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忘れられない失敗
数年前、突発的に髪を切りたくなったわたしは、雰囲気の良さそうな美容室をネットで探して予約をいれました。
オープンしたばかりのお店は内装も綺麗で、男性美容師が一人で切り盛りしていました。
ショートカットの要望を出すと、意外にも二つ返事で了承、雑誌を読んでいる短い間にカットが終わり、仕上がりもいい感じ。髪型だけでいえば、あくまでも毛髪のスタイルだけでいえば、「真木よう子」に近いかたちでした。
そんなスタイルを今までの人生で経験したことのなかったわたしは舞い上がりました。帰りの見慣れた道がいつも以上にキラキラして見えたのを覚えています。しかしそんな気分は、長くは続きませんでした。
帰宅して髪を触ってみると、毛髪がプチプチと切れて指につきました。
カットにすきバサミを使うと、切らなかった分の髪が挟まれて「半切れ」状態になり、力をすこしくわえただけでプツンと切れることがあります。それはよくあることです。
しかし、これほどの量は尋常ではありません。
毛束を指でつまんで根元からすべらせると「ブチッ」と音を立てて毛束のほとんどが切れるような状態でした。
おかしいな、と思いながら髪の毛全体をそうやって触ってみたら、切れない毛がないくらい、切れ毛の嵐。
おそろしいことに、無限切れ毛地獄は1週間ほど余裕で続き、1ヶ月、2ヶ月と経過してもまだ残っているほどでした。
美容室でのカットには「保証期間」というものがあるのをご存じでしょうか。施術から1週間くらいのうちは、修正を受け付けるというものです。
たいていはお店のスタンプカードや会員証などに、書いてあります。
明記されてなくとも、おそらくほとんどの美容室、美容師が対応すると思われる保証期間。
きっとあのお店にもあったのだと思います。そのような対応が。
しかし、わたしは無数の切れ毛に悩まされながらも、その美容室に連絡をすることはできませんでした。
だってもう切れちゃってるし。
覆水盆に返らず。切れかかった髪はもとには戻らない。
この状態を解消する方法があるとすれば、さらに短く切ってスポーツ刈りのような状態にするしかないのでは。それはちょっと無理だ。
そう思ったからです。
疑問はのこる
ただ、未だに「あれは何だったのだろうか?」とは思います。
切れ毛事変から半年ほど経過したあとで別の美容室に行ったところ「この状態はすきバサミではないと思う。すきバサミでこんな風になるのは信じられない。なにか合わない薬剤でも使ったのではないか」との見解で、ますますわけがわからなくなりました。例の切れ毛美容室ではカットとシャンプー、トリートメントをしてもらいましたが、特に変わった薬剤を塗布されたようなおぼえもないからです。
ただ、なんとなくだけどやっぱりすきバサミのせいではないだろうか、と素人ながらに体感と直感で考えているわけです。
かといってカットの際にすきバサミを使わないでくださいとも言えません。とくにわたしのような毛髪量が多くて短くする場合、すきバサミを使わないと切るのが大変なのかもしれず、それを普通の毛髪量の人と同じ料金でやってもらいたいと頼むことに若干抵抗があるからです。
あと、単純に「交渉スキル」が低いせいもあります。自分の意見を明確に伝える機会やスキルがない人間がとつぜん慣れないことをしようとすると、身体が震えたり、語気が強くなったりして、必要以上に興奮または怒っているように思われるのではないか、そのような懸念もあります。
苦い経験を経て、わたしが実行したのは「もうその美容室には行かない」という消極的な方法のみ。
インターネットで予約がとれるその店のページには、開店から年数が経った今、決して少なくない数の口コミが集まっています。ほとんどが技術や雰囲気を高く評価するものばかりです。わたしはそこに感想を書くことはしませんでした。自分にとっては最悪だったけど、ほかのひとにとっては悪くないどころか良い美容室だった。それだけのことです。わたしのようによほど毛髪が多くてショートカットを希望しないかぎり、同じようなことを体験するひとはいないはずです。
この事例からわたしが得た教訓は、ネットの口コミで見えているものだけが真価ではない、と常に念頭におく必要があるということです。
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美容室ジプシーはつづく
先日のことです。わたしはまた髪を短くしたい衝動にかられていました。最近よく行っている美容室はあるけれど、希望ほど短くは切ってもらえずいつも保守的。とても親身になってくれて有難い反面、物足りなさも感じていました。
もうそろそろ切れ毛頻発のトラウマも癒えた頃合いです。冒険者のような気持ちで、新たな店に行ってみることにしました。今度は選ぶにあたってネットだけでなく知人の評価も参考に。そうはいっても自分の髪質とそこの技術がうまくかみ合うかは実際に切ってもらわないとわかりません。
予約当日。初対面で若干緊張しながらも、女性美容師に「すきバサミで髪がひどい状態になった経験があること」をかいつまんで伝え、剛毛ながらもできる範囲で短くしてほしいとオーダーしました。美容師はハキハキと答え、テキパキとカットしていき、途中で「内側のところはすいていきますね」とすきバサミを使いました。
仕上がりはなかなか素晴らしいものでした。顔面と頭の形を除いた髪型のみで言えば「逃げ恥のときのガッキー」みたいになりました。しかし審判は帰宅してからです。おそるおそる指で毛をつまんで引っ張ると、何本かの毛がパラパラと切れました。入浴時もしつこく髪を引っ張り続けます。すると多数の毛が切れました。
すきバサミを使えば毛髪がこのように切れるのは当然のことなのです。それはわかっているのです。問題は切れ毛がいつまで続くか。どのくらいの毛が切れかかった状態なのか。それを注意深く見守っていくしかありません。
数日を経た今、切れ毛はだいぶ落ち着いています。幸いなことに、あのときほどの状態ではないようです。
おわりに
すきバサミがここまで多くの美容師に愛用されるのは、有用性が高いからなのでしょう。
それはわかるのですが、疑問が持ち上がります。
使用したあとで毛が「追い切れ」することを知りながら、どうして後処理が行われないのか。そこが不思議なのです。
シャンプー、カット(すきバサミ)、ときて、その後なぜまた洗髪をしないのか。毛を引っ張って切れかかっている部分を落としきらないのか。
それとも、毛がもっと細ければこんなに切れかかること自体がそもそも起こりえないのか。
いつの日か美容師に尋ねてみたいと思います。勇気をもって。
お読みいただきありがとうございました。