突然ですが、夢って不思議ですよね。
自分でもすぐには思い出せない記憶の断片をつなぎ合わせて、体験したことがないもののどこか懐かしいような物語が形成される。
ドラマ「精霊の守り人」を見るたびに、夢を見ているような気持ちになるのです。
夢でなければ、小説を読んで数年後に「どんな物語か説明して!」と誰かにいわれて記憶をつなぎ合わせたもの、というか。ところどころの台詞や場面に覚えがあるのに全く別の物語を見ているような気持ちというか。
「精霊の守り人」をドラマから見た方がいらっしゃったら、ぜひ原作も読んでみてほしいです。風の谷のナウシカの原作と映画くらいには、違いが楽しめると個人的には思います。
▼第4回は「神の守り人」の下巻に突入したあたりですね。
前置きが長くなりましたが、NHK大河ファンタジー「精霊の守り人2 悲しき破壊神」第4回『笑う魔物』のネタバレ感想とともに原作にも触れていきます。
▼公式サイト
▼前回(第3回)のネタバレ感想
※箇条書き部分がドラマのあらすじ、その下が補足と感想になります。
脱出を試みるチャグム
- 前回の終わりに狩人のモンに襲われたチャグム
- 同じく狩人のジンがそれを阻止してチャグムを助ける(ジンはモンとは逆にチャグムを守れと聖道師に命じられた)
- シュガたち数人とサンガル王国からの脱出を試みるチャグム
- 船を出すとほぼ同時に、サンガル兵が放った槍がチャグムの肩に刺さる
- タルシュ帝国の船に遭遇する
チャグム役の板垣瑞生(いたがきみずき)さん、新ヨゴ国の皇太子ならではの尊さがどうしてこんなに出せるのかなと思ったのですけど、喋るときにあまり口を大きく開けないんですよね。それでいて、声が凛としていてよく通るという。それが尊さの秘密なのかもとまじまじと見てしまいました。
原作との比較ですが、このあたりはあまり大きな差異はないです。狩人のモンがユンであることと、シュガは最初からお留守番していることくらいですかね。
四路街を出立するバルサとアスラ
- 「アスラ。いつかここに帰ってくると約束して。あなたは見込みがある」と言うマーサ
- アスラも涙ながらに「ここを離れたくない」と別れを惜しむ
- マーサの息子・トウノに案内されて遊牧民の野営地に到着
- 「いつだってバルサの味方さ」と友情を見せるトウノ
- 遊牧民のキャンプからすこし離れたところに泊まることにしたバルサとアスラ
ロタ王国では迫害されているタルの民の生活しか知らないアスラでしたが、マーサのもとで初めて外での人間らしい暮らしに触れたのかもしれません。
ちなみに原作ではこのような台詞をマーサは言っていました。
「アスラ、この先、あなたにどんな運命が待っているのか、わたしにはわからない。でもね、もし、あなたが望むなら、もう一度ここへ帰っていらっしゃい。あなたには、衣を見る目があるようだから、わたしが、一流の衣装職人に仕込んであげますよ。お兄さんにも、なにかよい仕事を見つけてあげましょう」
アスラはびっくりして、きりっと立っているマーサを見つめた。
「職人になるのも、商人になるのも、大変よ。厳しい道だわ。でもね、そういう道で生きようと思うなら、わたしが手助けをしましょう。―――忘れないでね、わたしのことを」
(引用元:「神の守り人(上 来訪編)」終章 旅立ちより)
こちらも親切ですが、距離を詰めすぎない、アスラをより大人扱いしているような優しさを見せています。ちなみに、このあとアスラは泣きそうになるのをこらえて、タルの民の流儀で感謝のしぐさを示します。
また、原作ではロタ王国の国境を抜けるためにバルサは小さな隊商の護衛につくことにします。その契約をするときに強さをいかんなく発揮して隊商長の不安を一掃するバルサがかっこいいんです。女用心棒としての世渡り術、ドラマでも描かれてほしいです。
イーハンとトリーシアの恋
- 16年前、家臣とはぐれ山間部で道に迷い怪我をしたイーハン
- タルの民であるトリーシアに助けられる
- 一緒に暮らすうちに心を通わせるようになる二人
- イーハン殿下を探す一行がタルの民の住処に火をつける
- 涙をこらえ無言でイーハンを送り出すトリーシア
ディーン・フジオカさんのターンが来ました。やっと来ました!
ひどい怪我をして歩けないイーハンに肩を貸すトリーシア……よく一人で運べたなぁ……と細かいツッコミは置いといて、ここはちょっと原作との違いに触れないわけにはいかないです。
原作ではイーハンは寒い北部の大地で凍傷になっていしまい、タルの民の一家に助けられます。そこの娘であるとても美しい娘・トリーシアは献身的にイーハンの冷たい身体をさすって介抱します。トリーシアにほぼ一目ぼれしたイーハンは、回復するまでそこで暮らし、吹雪がやんだら自分の足で城塞へ帰還しています。
そのあとも兄(ロタ王)の反対にあいながらもトリーシアの元へ足繁く通いますが、ある日トリーシアが突然姿を消してしまいそれきり。十数年のうちに妻も子供ももうけている身でありながらシハナに密命してトリーシアを探させている、という設定です。
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ドラマの方では第1回で処刑されたトリーシアを見たイーハンが息をのんでいますが、原作ではトリーシアが処刑されたタルの民の女であることをイーハンはしばらく知りません。それを知ったときには、深く嘆き悲しむのですが、ドラマのほうだとちょっとケロッとしすぎではないですかね。昔好きだった、今でも会いたい人の惨状を見たわりにはたいして塞ぎ込んでないというか。
個人的に楽しみにしていたおディーンさんの出番だというのに違和感がありちょっと残念でした。
タルシュ帝国に捕らえられたチャグム
- タルシュ帝国の船上で目を覚ましたチャグム
- シュガ達が無事に帰されたことを知って自害しようとするチャグム
- タルシュ帝国軍人ヒュウゴが口に指を突っ込んで阻止
- ヒュウゴは自分が旧ヨゴ人である身を語り、チャグムに戦火を避けるように説得する
演じる役によって体重をかなりコントロールすることも辞さない鈴木亮平さん、ヒュウゴ役がすごくはまってますね。底知れぬ感じもするし、すごく強そう。この人に説得されたらすぐ言うとおりにしたくなるかもと思うほどのカリスマ性もありますね。
タルシュ帝国に支配されるようになった旧ヨゴ国の民は「なぜむだな戦いをする必要があったのか、戦火を避けられなかったのか」と思っていることをチャグムに語るヒュウゴ。チャグムの国である新ヨゴ国も今まさに同じ運命をたどろうとしていることから、戦争を避ける道があることをチャグムに説きます。
このあたりは原案と大体同じような道筋かと思われます。皇太子という身分でありながら、チャグムが身の回りのことを自分でやる手つきが妙に良いことに目をみはるヒュウゴ、(小さい頃にバルサと旅をしていたからだよねぇと目を細める読者)、という細かい部分も描かれるといいなぁ。
バルサたちを狼の群れが襲う
- バルサとアスラが眠ろうとしているテントの周りに狼の大群が来る
- ひとりで狼に立ち向かうバルサ
- 幼い頃、父親を狼に殺されたアスラはついカミサマを呼ぶ
- カミサマによる狼の殺戮のあと、笑うアスラ
- バルサは昔ジグロに言われた言葉を思い出す
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「人に槍を向けたとき、自分の魂にも槍を向けているのだ。自分の魂も殺しているのだ。魂をどう守るかは、俺は教えることはできない。自分で考えろ」というジグロの言葉。
ジグロはバルサを守るためにかつての親友をも倒さざるをえなかった体験から、人に刃を向けることの痛みや苦しさを知っていたのでしょう。バルサは元々槍を使うのが上手でした。槍をふるうと身体がよろこぶのがわかるほど、武術に向いていたのでしょう。
そんなバルサを目の当たりにして、少女のうちから人に刃をふるうということの本当の恐ろしさを知らないままに、槍で戦うことを身に着けていくのがジグロは悲しかった。その悲しさを、バルサはアスラと旅することで追体験することになります。原作ではバルサはアスラの前で泣くことはしませんが、ドラマでの悲しみの表現として「めっちゃ強いはずのバルサが自分の思い出とともにアスラのことで泣いている」というのはぐっとくるものがありました。
おわりに
今回は他にも、タンダがスファルの手を借りて逃げる(チキサはシハナと一緒)、ロタ王の死(建国の儀までは秘する)などもありました。
第4回「笑う魔物」の再放送は2017年2月18日(土) 午前0時10分からです。金曜日の深夜なんですね。
次回も楽しみです。
お読みいただきありがとうございました。
▼原作の守り人シリーズについて書いた記事です